甘熟王バナナ ブランドストーリー

1972年、前例のない『高地栽培』は、
スミフルの挑戦でした。

非常識が生んだ革命的
“高地栽培バナナ”

現在、日本人が最も食べる果物「バナナ」は、明治・大正時代めったに食べられない高嶺の花でしたが、日本が日清戦争後に台湾を統治するようになり、日本との貿易が盛んになるにつれ、台湾産バナナも商品として入荷するようになったことで、大正後半~昭和に入った頃から消費者が食べることができるようになりました。それでも、お土産や病気の時などにしか食べられない特別な果物でした。
スミフル(旧:住商フルーツ)は1970年(昭和45年)にフィリピン・ミンダナオ島でバナナ生産を開始しましたが、中南米でバナナ事業を展開していた他メーカーは1960年代にすでに同地でバナナ生産を始めており、一般的なバナナ(低地栽培)の農園を確保するのが困難でした。しかしこれが後に幸いして「高地栽培バナナ」を拡大するきっかけとなるのです。
バナナは生産性と輸送の利便性を考え、積出港から近い平地で栽培するのが当たり前という時代、ほとんどのバナナは低地で栽培されていましたが、農園が確保できない中、スミフルは他と差別化を図るために、あえてまだ誰も手掛けていない高地にまで農園を拡げ、1972年にいち早く「高地栽培バナナ」に着手。前人未踏の標高500~700mの「高地農園」は、低地農園とは大きく異なり、農園場所の選定・開拓、道路整備から始まり、水道設備や選果場整備、労働人材確保など、様々なインフラ整備に大変な労力と時間を要しました。さらに、バナナは熱帯作物であることから、朝の気温が低くなる高地で栽培をするうえで、土壌の特性を見極めていく以外に耐寒性・耐病性・生産性等についても様々な研究を推進しました。 続きを読む▼

驚くほどの美味しさと引きかえの、
手間と時間。

「高地農園」はフィリピンの最高峰アポ山系を囲む高地に位置しており、昼は海から、夜には山から風が吹きぬけ、また熱帯とはいえ早朝の低い気温と昼間の温度差が大きいため、低地に比べると収穫までに約4ヶ月も長くかかりますが、バナナは厚い皮で寒さから身を守りながら、果実にたくさんのデンプンを蓄え、成長していきます。その間、バナナの生長を日々確認しながら、多くの手間と時間をかけてフルーツケアを行い、大切に育てています。
また、土壌は古くに火山活動していたアポ山の噴火のとき降り積もった火山灰が基礎になっています。熱帯地方の雨はときにすさまじい勢いで降ることがあり、低い土地を冠水させてしまうことさえありますが、作物の生育にとって雨は欠かせません。しかし余分な水分は作物を徒長させ、収穫物の味も水っぽくしてしまいます。そこで、水はけのよい傾斜地中心に育てることで、余分な雨水はすべて流れ、また水はけのよい火山灰の土壌がしみ込んだ雨水を、ほどよくバナナの根に供給してくれるのです。さらに開始当時から健康な土づくりにこだわっていたため、定期的に土壌分析を実施。その分析結果をもとに有機質肥料を与え、栄養たっぷりの土壌で、バナナをじっくりと大切に育てます。そうすることで、水っぽくならず、甘さや粘りのもとになるデンプン質がたくさん蓄えられるのです。 続きを読む▼

高地では収穫作業も一苦労。収穫するバナナ(全房)は約35~50kgにもなり、収穫スタッフが1房ずつ丁寧に収穫し、収穫専用の棚にバナナを載せて輸送用のトラックまで運び、選果場へ。そして選果場で水洗い~箱詰めまで行い、平地にある積出港へトラックで輸送し、バナナ専用船で約5日間かけて日本に向けて運ばれています。
熟成するのも、ゆっくり。日本に到着後、バナナは未熟の青い状態から黄色く追熟する果物ですが、中身がぎっしり詰まっているので、ここでも低地のバナナよりも時間をかけて、じっくり追熟させます。時間も手間もかかる上、なかなか甘くならなかった高地栽培のバナナは、じつは最初、粗悪品だと思われていました。当時のバナナ熟成加工では、主にフィリピン産と台湾産で分けられており、フィリピン産でそのほとんどを占める低地栽培品の加工方法では、スミフル(旧:住商フルーツ)だけが栽培していた高地栽培品の加工に適さず、甘さを引き出すことができませんでした。
ところが当時フィリピン低地栽培品やエクアドル産に比べて甘く価格も高かった台湾産バナナに、高地栽培品は似ているということに気付き、加工を台湾産に近い方法で試行錯誤しながら、さらに時間をかけて丁寧に追熟してみると、今までに誰も味わったことがない、糖度が高く、驚くほどに美味しいバナナが誕生しました。 続きを読む▼

幻の美味しいバナナから、
みんなの“甘熟王”へ。

当時、台湾バナナは戦前からの長い歴史とそのおいしさから親しまれ、価格も他のバナナより高かったのですが、栽培地台湾では毎年夏にやってくる台風の影響で、年間を通した日本への供給が難しく、春から初夏まで限定の季節商材になっていました。一方、スミフル当時の「高地栽培バナナ」の生産量はまだまだ少なく、日本の全輸入量の3%程度で希少価値のある「幻の美味しいバナナ」とバナナ通の間では知られ、百貨店や高級スーパー、果物専門店で「最高級バナナ」として販売(この当時は独自ブランドの販売ではありませんでした)されるなど、流通業の皆様には「赤箱」や「P-1(Plantation-1)」などの愛称で呼ばれ、食味に対してとても高い評価を得ていました。
そして1990年代に入り、他社も標高の高い農園を開発し類似のバナナを栽培するようになり、輸入量が増えたことで消費者の皆様にも「高地栽培バナナ(高糖度バナナ)」が知られるようになり、スミフルでは1999年から「プレミアバナナ」として本格販売を開始し、2006年4月には満を持して「甘熟王(かんじゅくおう)」ブランドを立ち上げました。
甘熟王バナナの黄色く熟した皮を剥くと、甘い香りとともに黄色い果肉が美味しさを醸し出す。ひと口ほおばると、粘りのある食感。とろけるような甘さは、まるで甘い蜜。一度食べたら、低地栽培のバナナは食べられなくなる⁉というくらい、濃厚で満足感がある。
生産~熟成加工まで、低地栽培に比べて作業が多く、手間と時間もかかってしまいます。しかしそのような努力がすべて「美味しさという価値」に変わっていくと思えば、生産者の苦労も「つくる喜び」に変わっていくのです。 続きを読む▼

甘熟王を超えた
“甘熟王ゴールドプレミアム”の誕生。

「美味しさ」にこだわり続け、2006年6月にスタンダードな「高地栽培バナナ」よりも更に 約1ヶ月長く生育にかかる標高800m以上の“超高地農園”での栽培も開始。2014年5月には、「一番、美味しい!」を追求し、超高地農園で肥沃な土壌のみを限定した“ゴールドエリア”で畑ごとに詳細な土壌分析を行い、マグネシウム・チッソ・リン酸・カリウムなどのミネラルバランスを整え、有機質肥料を中心に施肥しながら、健康的な土壌を保つ、“ミネラル栽培”を実践。熟成加工においても甘熟王の技術&さらに手間暇かけることで誕生した甘熟王を超える、超高地ミネラル栽培バナナ「甘熟王ゴールドプレミアム」は「もっちり、濃蜜な甘さ」を味わえる、極上の美味しさとなりました。
日本から約3,000キロ。遠い島国の高地で大きな葉を揺らし、ゆっくり、じっくり育った、元祖・高地栽培バナナ。どこよりも早く高地栽培を手掛けた経験と独自の栽培技術で、他の高地栽培バナナでは味わえない、「バナナの王様(King)」にふさわしい、甘くて美味しいバナナには長い歴史と生産者の想いもたっぷりと詰まっています。 続きを読む▼